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2010.03.31

エンジェルス・イン・アメリカ

ドラマ アメリカ 2005年
監督 マイク・ニコルズ
出演 アル・パチーノ メリル・ストリープ エマ・トンプソン メアリー=ルイーズ・パーカー ジェフリー・ライト

感想
名作だと思う。
へヴィーだけど、見る価値がある。
俳優は全員、素晴らしいし、ストーリー・脚本も素晴らしい。
特にアル・ハチーノは最高!鬼気迫るものがあった。
メリル・ストリープも凄かった!

舞台は1980年代のアメリカ。
ゲイのエイズによる死亡がピークを迎えた時代。
一人のゲイの男性がエイズに罹患する。彼がメインの主人公だと思う。
その時、彼のパートナーの男性はどうしたのか?友人はどうしたのか?
また、一人の権力者もエイズに罹患。その時、その男はどうしたのか?残りの人生をどう過ごしたのか?
この権力者の部下は、モルモン教の男性。彼は自分がゲイだとは認められない。妻は精神的に不安定で、二人の関係は上手くいっていない。彼はどうするのか?そして妻は?そして彼の母親は?
これらの登場人物たちのストーリーが描かれています。

登場人物のそれぞれの宗教観・政治的価値観・倫理観・人生観などの価値観や、人種問題がきちんと描かれ、その上での登場人物同士の関係の変化が描かれています。
だから説得力がある。
エゴのぶつかり合い、感情のすれ違い、人間の弱さ、ふっとした時の優しさ、愛情が描かれています。
むっちゃ、リアルなドラマだと思う。

このドラマでは、たまたま主人公がゲイでエイズに罹患してるんだけど、この病気を他の死にいたる病に置き換えてみると非常に一般的な話にもなりうると思う。
一般化しうるって事は、それだけ普遍的な問題を描いているってことだと思うのです。
人間の本質的な問題を取り扱っているんだと思う。
生きるとは?死ぬとは?人生の価値とは?また、何に価値を置いて人生を生きるのか?って事などなど。
他にもいろいろあるんだけど。
ただ、主人公たちがゲイでエイズに罹患しているという事によって、問題は更に複雑にはなっているんだと思うのですが。それでも、きちんとまとめきったこのドラマは素晴らしいと思います。
妥協が無かった。

基本的にこういう映画のゲイの人たちって、美化されがちっていうか、こんなにみんな良い友人と家族に恵まれているのかなぁ~って思ったりする事があるのですが、このドラマにはそういうご都合主義的な美しさはあまりないのです。ひたすら衝突し、傷つき、求めます。そこにあるのは人間のエゴです。これを見つめ、認め、許すことがどんなに困難なのかまで描かれています。
これは本当に凄い事だと思うし、勇気のいる事だったと思う。

以下は私見ですので隠します。
生死に関するへヴィーな内容なので…勇気のある人だけ見てみてください。
あまり見る事はお勧めしません。


私は色んな人の死の場面に仕事上、立ち会ってきました。
そこで思うのは、『人間が死ぬ時は、その人が生きてきたように死んでいく』って事です。
これは不慮の事故とかでの死はあまり含まれないとは思うのですが…。
ただ、死後の家族の悲嘆(グリーフ)にはその家族の関係とか、死んだ人の家族での位置っていうのが凄く大きく影響するのではないかと思う。そういう意味では、やっぱりその人の生き方が影響するんだと思う。

人間は生まれた時から死ぬ事が細胞レベルでプログラムされていて、そこから逃れる事は出来ない。
死に向かって生きているんだと思う。
それが人間の人生。死を以って完結する。
それはお釈迦様の昔から、そしてイエスの頃からずっと人間にとっての問題だった。
でもそれがナチュラル・コースなんだよね。
死なないなんて、あり得ないし、逃げられっこないのだ。
…ちなみにクローンも同様です。細胞死からは逃れられない。
なのに、何でみんな死ぬのを嫌がるのか?怖がるのか?生に固執するのか?
死ぬ事ってそんなに悪い事なの?
生きてるってそんなに良い事なの?
良く分らないです。
残された人にとっては確かに喪失の悲嘆があると思う。
でも、本人にとっては?
本人が満足して死んでいたら、周囲の人の悲嘆も少しは軽くなるんじゃないかな?って私は最近思ってます。
でね、あんまり日本人ってね、こういう事を考えていないような気がするし、議論すらされてないような気がする。
タブー的な空気を感じる。一部を除いて。

このドラマは死を真正面から見詰めているドラマだった。
だから好き。

私も、一時期死が怖かったです。
でも、最近はかなりマシです。

死が怖いと自覚した時、なんで死が怖いのか?って考えました。
で、それは私が死を知らないからだって思いました。
で、死について知れば、死は怖くなくなるんじゃないかと思いました。
で、更に、私は『人は生きてきたように死んでいく』という経験的な知見から来る持論の持ち主なので、死の意味を知らないのと同時に生の意味を知らない事に気付きました。
だから、生と死の意味を知りたいと思いました。
そして、私なりの答えがなんとなく見えてきました。
だから、今はかなり精神的に楽だし、幸せです。充実した日を送っている事を自覚して生きているので。

死にゆく人に「可哀想」ってよく言う人が居るんだけど、これって凄く失礼な場合もあると思う。(人にもよると思うのですが…)。可哀想、可哀想って言われて悲劇のヒロインみたいに死にたい人もいるしね。実際。
でも、私の時は言われたくないから。
もし本人が満足して死んでいくんだったら、それは「可哀想」なんかじゃない。そういう人に対しては、むしろ同情は失礼だと思う。尊厳が傷つけられているとさえ感じます。
きちんと生きた人には、それに対する相応の敬意を払うべきだと私は思う。
なので、これからも、そういう人たちに沢山私は出会うと思うのですが、「お疲れさまでした。良く頑張ったね」って言いたいと思うし、自分も言われたい。
自分としてのベストは、可能な事ならば笑って死にたい。で、笑って見送られたい。

って事をこのドラマを見ている間、何度も感じました。
重くてすみません。

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